中国・深圳の世界最大手360ºメーカー Insta360 のCEO JK氏と対談し、「観光エクスプローラー」に認定されました。
2019年12月18日、新たに設立されたInsta360東京支社にて、Insta360のCEO刘靖康 (Liu Jingkang、以下JK)氏と弊社代表の前田将太が対談した内容をご覧ください。

前田: はじめまして。私はチームL.PLAZA(※1)の代表、前田将太です。今日はJKさんと未来を語り合うために来ました。よろしくお願いします。

JK: よろしくお願いします。

前田: 私たちは東京大学大学院の修士一年のメンバー4人で構成されたチームで活動しています。

前田: 本日私たちが用意しているアジェンダは、次の3つです。

   ① ビジョンについて

   ② 市場について

   ③ 私たちのこれまでについて

「私たちのビジョンは最高の瞬間、最高の場所の全てをキャプチャーできるカメラを作ることです」(JK)
前田: 最初のトピックは「ビジョンについて」です。

前田: 私たちのビジョンは、「Accelerate Metabolism」(※2)「世界中の人々に感動を与える日本にする」「すべての人が(死に際して人生を振り返ったときに)いい人生だったと胸を張って言える世界にする」の3つです。JKさんのビジョンについて教えてください。あなたの会社や、あなたのプロダクトによって、どんな世界を作りたいとお考えですか?

JK: 私はInsta360を5年前の22〜23歳のときに始めました。そのときには周りに多くの大学生がいて、よくコンサートに行く機会がありました。私はあるコンサートの雰囲気に非常に感動しました。そこで、この雰囲気のすべてをキャプチャーすることが可能ならばいいなと思いました。もしコンサートホールのすべてをキャプチャーできると、将来そのコンサートを再び味わうことができるようになります。そしてその手段としてカメラが有効であることは明らかです。

 この経験をもとに、私たちの会社は「全てをキャプチャーできるカメラ」を作ることをビジョンとし、最高の瞬間、最高の場所をキャプチャーし、保存できるカメラを作り続けています。現在までには360ºカメラ、VRカメラ、アクションカメラ、そして3ヶ月前にウェアラブルカメラ(Insta360 GO)を作りました。そしてこれからも新しい技術を用いて、全てをキャプチャーできるカメラを作り続けていきます。

前田: そのビジョンを達成するために難しいことは何だと思いますか?

JK: 私たちの会社は5年前に苦しい時期がありました。5年前に会社を始めたとき、私は他の創業者を探す必要がありました。当初の給料は3万円ほどだったので、他の人を説得して仲間にするのがとても大変でした。幸運なことに段々とお金を稼げるようになってきたので、人々を巻き込んで会社を始めることができました。

 会社がハードウェアを作るために南京から深センへと移転してからも、ハードウェアの制作過程などで困難な時期はありましたが、「プロダクトは我々の想定通りに動かない」「顧客の反応は想定と異なる」などのことは当然なので、それを超えるために私たちは挑戦を続けました。

 360ºコンテンツでも難しい時期はありました。VRや360ºコンテンツは2016年頃にブームが来てメディアにもよく取り上げられましたが、本音を言うとここ2年間は下火になってきています。これも挑戦だと捉えています。後でも述べるかもしれませんが、360º業界では次のことに挑戦しています。「VR/360ºカメラを作り続けること」です。アクションカメラやウェアラブルカメラも作っていますが、VR/360ºカメラに人員を割き続けています。これはVR/360ºカメラに将来性を感じているからです。360ºコンテンツがより有名になるためにこれからもカメラやコンテンツを作り続けます。(※3)

前田: 私たちは本当にInsta360の商品を気に入っています。私たちはあなた方が作る未来をとても楽しみにしており、Insta360のビジョンはとても素晴らしいと思っています。

JK: ありがとうございます。

「日本は生活水準が高いので、中国・アメリカに次ぐ第三の市場になりうるポテンシャルがある」(JK)
前田: 2つ目のテーマは「市場について」です。まず、JKさんは日本の市場についてどのようにお考えですか?

JK: 日本はとても大きな市場だと捉えています。これまで数年、Insta360の主な市場は中国とアメリカでしたが、日本はこれから市場が大きく成長し、アメリカに次ぐ第三の市場になると考えています。日本のお客様からはとてもいい反応をもらっています。日本人のお客様はとてもフレンドリーで、イノベーティブなものを好む傾向にあると考えています。また、カメラが好きな人が日本にはとても多い印象です。これらが日本の特徴であると考えています。日本の人口は約1.2億人で、中国やアメリカと比べて人口規模は小さいですが、カメラなどの高級品を買える人がとても多いのが特徴です。

「360ºコンテンツは観光分野を中心に日本中に普及していくと信じています」(前田)

前田: このいい機会に、私たちが見つけた日本の市場のインサイトについてお伝えします。日本ではまだ360ºコンテンツや360ºカメラはあまり知られていません。360ºコンテンツはアウトドアスポーツなどにとても適していますが、日本では他の国と比べてアウトドアスポーツもそこまで普及していません。私たちは360ºコンテンツが観光の分野で普及していくと信じています。日本は「気候」「自然」「文化」「食事」の4条件に多様性のある、観光大国のポテンシャルを秘めた国です。旅館も外国の方に人気です。日本の観光市場はインバウンド外国人の増加によって急速に拡大しています。

 旅館に泊まるなどの旅行での体験はもっとポピュラーになっていくと信じています。これらの体験を直感的に伝えるのに、360ºカメラが最も適していると考えています。このことについてどうお考えですか?

JK: 私も同じアイデアを持っていました。今から先月浅草で撮った人力車の360º映像をお見せします。このビデオをVRヘッドセットで見ると、伝統的な街並みを感じられます。これはプロ用のInsta360 Titanというカメラで撮ったものです。これは観光の360º映像で、あなたたちのイメージと近いと思います。

 私は360ºコンテンツが観光と相性がいいということに同意します。ポイントは360º写真と360º映像では違いがあるということです。360º写真はFacebookやLINEなどが対応しており、周囲の様子を細かく伝えることができるので、会社やレストラン、旅館などのWEBサイトでお客様にイメージを伝えるのに適しています。また、Googleストリートビューでも使われており、屋外・屋内の様子を伝えるのに効果的です。360º写真には他の写真との違いが明確にあります。しかし、360º映像ではもっとチャレンジが必要になります。なぜならこのようなスタイルのビデオを作るには直感的なコンテンツのための新たなフォーマットを作る必要があるからです。多くの人がこの領域に挑戦しようとしましたが、諦めて去って行きました。360º/VR映像を作るにあたって困難に直面するのです。360ºカメラや360º/VRコンテンツではまだ雰囲気を収録できないからです。

 例えば、私が360ºカメラでこのInsta360東京支社の映像を撮るとします。もし細かい部分を見せたい場合には、普通のカメラならば近づけば撮れます。普通のカメラは動かすことで詳細まで撮れるという強みがあります。しかし、360ºカメラの特徴は「直感的」です。ここに360ºカメラをおいても、観客に細部までは伝えることができません。普通のカメラでは「ストーリー」を伝えることができますが、360ºカメラでは周囲の状況を伝えることはできても、詳細までは伝えられないので、「ストーリー」までは伝えられません。

 もう一つ具体例をあげましょう。ドラマ・映画と舞台・演劇を比べていきます。私の考えでは、舞台・演劇はドラマ・映画と比べて、大衆性が低いと思っています。舞台・演劇では細部まで伝えることが難しいからです。この知見をもとに、私たちは360ºカメラでの直感的なコンテンツのための新たなフォーマットを作ろうと挑戦しています。

 この(人力車の)映像では、人々の会話や表情などの詳細部分を伝えるために普通のカメラを併用して撮影しています。この使い分けがポイントです。360ºカメラと普通のカメラを組み合わせることが大事なのです。あなた方の360ºコンテンツに関するインサイトに対する私の意見は、360º写真の方が有用で、360º映像は障壁が高いということです。360º写真は使いやすく、現存するプラットフォームが 対応しているので、コンシューマーにも受けがいいと思います。しかし、360º映像は詳細やストーリーを伝えるのには適していません。

「360ºコンテンツに関するビジネスで壁にぶつかってきた」(前田)
前田: 続いて3つ目のテーマは、「私たちのこれまでについて」です。私たちは日本中を回って200箇所で2,000枚以上の360º写真を撮ってきました。また、これらの写真を用いた旅行者のためのプラットフォームを開発していました。

 また、360º写真で宿泊施設の部屋の中を見ることができるサービスも開発、検証を進めていました。既にアーリーアダプターの宿泊施設を数件確保し、ホテルの部屋において、通常の写真と360º写真での宿泊施設選びの体験を比較する検証実験を行った結果、360º写真の方が分かりやすさ・納得感が向上するというデータが得られました。

JK: おっしゃる通りで、360º写真は実際に不動産業界で有効に使われています。中国では不動産のWEBサイトにて、お客様がオンラインで物件を選ぶ際に、360º写真を活用しています。

前田: このようにして日本の360ºコンテンツの観光プラットフォームを開発していた私たちですが、壁にぶつかりました。toCのプラットフォームを作るには、ある程度のユーザーがいないと成り立たないのですが、日本ではまだ360ºコンテンツのtoC市場が成熟していないため、プラットフォームが機能しない可能性が高いのです。 その1番の原因は、せっかく360º写真で撮っても、それを効果的に共有する術がないことが原因ではないかと考えました。また、360º写真ゆえの特有の扱いづらさも原因にあるのではないかと考えました。

 私たちが考える360º写真特有の扱いづらさとは、次のようなことではないかと考えています。一度に一枚ずつしかダウンロードできないこと、一度ダウンロードするとEXIFデータが消えて360º写真と認識されなくなること、プレビューでのアイコンが見づらいこと、データ容量が多くなると、カメラやアプリが非常に重たくなることなどです。もし可能でしたら、改善していただけると、さらなる360ºカメラの普及につながるではないかと考えています。

 以上の見解から、私たちは事業の方針として、toBサイドから着手しようと考えています。日本の自治体や観光地は、魅力的なコンテンツを作成して、積極的にPRしたいという強いニーズがあります。コンシューマーが360ºコンテンツに触れる機会を増やすことで、認知度が上がり、360ºコンテンツ市場の拡大に寄与するのではないかと考えています。現在、東京都の三鷹市から、Insta360 ONEXを用いた観光PR商材の作成を依頼されています。

「360ºコンテンツの輝かしい未来に向かって御社と一緒に挑戦したい」(前田)
前田: 私たち自身が360ºコンテンツに魅せられた人でありますので、360ºコンテンツの未来を感じています。御社と一緒に挑戦させていただきたいと考えています。

 本日は大変お忙しい中、このような貴重な機会を設けて頂きまして、本当にありがとうございました。ささやかながら、私たちから日本のお土産をご用意させて頂きました。JKさんはハローキティがお好きと伺ったので、ぬいぐるみを買ってきました。

前田: 本日は本当にありがとうございました。

JK: ありがとうございました。



この対談をきっかけに、Team Insta360の一員として、共に挑戦していくことになりました。弊社代表前田が、公認のエクスプローラーとして、日本の観光地の魅力を、360ºコンテンツを活用して、発信していきます!


※注記
1. チームL.PLAZAは株式会社LeadX設立前のチーム名です。
2. Accelerate Metabolism = 新陳代謝を加速させ、旧態依然の社会構造を壊し、世の中をアップデートし続ける仕組みを作ることで、イノベーションを加速させる。
3. 2020年1月に360ºカメラの最新機種である、Insta360 ONE Rが発売されました。